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第1話 /10
この男。
なんという騎士だろう。ただ刃を交え、相手を傷つけたわけでもないのに戦意を喪失させるなんて……。
しかも相手が降参した瞬間、空中で剣を止められるほどの力量。なかなかできる芸当ではない。
エマリーは漆黒の騎士の強さがよく理解できた。
「巷じゃ、あの無敗の男と恐れられていたお頭が……」
「……負けた」
統率者を狩られた群れは脆い。同じく戦意喪失した盗賊たちを、エマリー率いる兵士たちが縄で拘束した。
「ミーア!」
「お母さん!!」
兵士が拘束し終えると、村にはふたたび静けさが戻った。少女は無事に母親の元に戻ることができた。
その光景を見たエマリーはほっと胸を撫で下ろした。
「エマリー様、ご無事で何よりですが、どうかお一人で行動なさるのはおやめください!」
マニオンはエマリーの元へと駆け寄った後の開口一番にそう口にした。
まただ、またこうやって自分をそんな目で見てくる……。
たしかに、自分はメイフィールドの王子。君子でもあるのだから当然と言えば当然ではある。
しかし、エマリーには不快でしかならない。
「主である俺が動かなくてどうするんだ? あの子の身が危険だったんだ。俺が行動するのは当然だろう?」
「しかし! 万が一、貴方様に何かあれば我々は!」
――そう。マニオンのこういう過保護なところもまた、エマリーを苛立たせる原因なのだ。
「貴方様の御身に関わります」
彼は懲りずにそう繰り返した。
「エマリー様……」
そして、手を握るこの所作はさらにエマリーを嫌悪させる行動のひとつでもあった。
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