18 / 22

第1話 /10

 この男。  なんという騎士だろう。ただ刃を交え、相手を傷つけたわけでもないのに戦意を喪失させるなんて……。  しかも相手が降参した瞬間、空中で剣を止められるほどの力量。なかなかできる芸当ではない。  エマリーは漆黒の騎士の強さがよく理解できた。 「巷じゃ、あの無敗の男と恐れられていたお頭が……」 「……負けた」  統率者を狩られた群れは脆い。同じく戦意喪失した盗賊たちを、エマリー率いる兵士たちが縄で拘束した。 「ミーア!」 「お母さん!!」  兵士が拘束し終えると、村にはふたたび静けさが戻った。少女は無事に母親の元に戻ることができた。  その光景を見たエマリーはほっと胸を撫で下ろした。 「エマリー様、ご無事で何よりですが、どうかお一人で行動なさるのはおやめください!」  マニオンはエマリーの元へと駆け寄った後の開口一番にそう口にした。  まただ、またこうやって自分をそんな目で見てくる……。  たしかに、自分はメイフィールドの王子。君子でもあるのだから当然と言えば当然ではある。  しかし、エマリーには不快でしかならない。 「主である俺が動かなくてどうするんだ? あの子の身が危険だったんだ。俺が行動するのは当然だろう?」 「しかし! 万が一、貴方様に何かあれば我々は!」  ――そう。マニオンのこういう過保護なところもまた、エマリーを苛立たせる原因なのだ。 「貴方様の御身に関わります」  彼は懲りずにそう繰り返した。 「エマリー様……」  そして、手を握るこの所作はさらにエマリーを嫌悪させる行動のひとつでもあった。

ともだちにシェアしよう!