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季節外れの台風-8

「だって意味ないじゃん。謝罪と言い訳って関係を続けたいからするんでしょ? 私は航ちゃんとはもういいかなって思っているから、そんなの必要ないし。傷つけたのはごめんねって感じだけど、航ちゃんとの毎日は、あまりにも平凡すぎてつまらなかった」  込み上げてきた怒りが爆発するかと思ったけれど、それも急に萎んで、今度は涙が出てきそう。  つまらなかった、か。俺が穏やかで良いものだと思っていたこの日々は彼女にとってはただつまらないものだったんだ。  俺のことも何かあれば簡単に手放せる存在で、いくらでも代わりが、いや、それ以上の存在が彼女の周りには他にいて、そしてそれがその先輩なんだ。  朝起きたばかりのときは、彼女の涎にすら幸せを感じ、この日々を守りたいし重ねていきたいと思っていたのに、それはこれまで彼女に伝わっていなかったし、伝わったとしても鼻で笑われていたかもしれない。 「荷物、航ちゃんがいない間にまとめるから。私のベッドとか、ふたりで買った家具とか、そういうのも全部いらない。あげるね」 「なぁ……、もう本当に無理なのか? そこまで華に言わせてしまうくらい、俺が嫌なことをしちゃった……?」 「だからそういうところだよ。なんか違ったんだよね。些細なことに幸せ感じるだけで満足したくないし、もう少しリードしてくれる人が良かったってだけの話。良い感じに別れようと思って計画していたのに、それを航ちゃんが台無しにしただけ。結婚もするつもりなかったし」

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