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季節外れの台風-11
◇
隣の県にある実家は、車で数時間とはいえそう頻繁に帰るわけではないから、久しぶりの帰省だ。
彼女の浮気という衝撃的な事件が起きてしまったけれど、今週はたまたま仕事の忙しい波がきたせいで、彼女のことを考えている余裕がなかった。
けれど週末になり、予定が実家に帰るだけになれば、彼女のことを考える時間が多くなるし、まして楽しみにしてくれている母さんに対して、どんなふうに伝えたら良いのだろうか。
ここまで気が重い帰省は初めてだ、と思いながら玄関のドアを開けた。
「航兄 、おかえり!」
「うお!」
妹の小春 が走って出迎えにきてくれ、それから俺に抱きついてきた。
今年の4月から大学生になるというのに、兄を鬱陶しがることもなく、こうして甘えてくれることが嬉しい。
「びっくりするじゃん」
可愛く結んでいる髪をを崩さないようにと、気を遣いながら頭を撫でる。
「だって久しぶりだから! 帰ってきてくれて嬉しい! ……華さんは? いない?」
「華はいないよ」
「ふうん」
いきなり彼女の話題を出され、少し動揺したタイミングで母さんも出迎えに来てくれた。
「おかえり。父さんはいつもの友人たちとゴルフだってさ。あんたが帰ってくるのにマイペースなこと」
「ゴルフ? そっか」
久しぶりに息子が帰ってくるこのタイミングで普通出かけるか? と驚いたけれど、まだ彼女のことを知られたくなかったし、ちょうど良かったかもしれない。
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