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季節外れの台風-16

「翼くんも一人暮らしの家を探してるんだけど、なかなか良いところが見つからなくて。あんたにどこか良い物件ないかなって聞くつもりだったけど、その必要もないね。一緒に住めば解決! 大学もあんたの家から電車で行けるだろうし」 「いや、待ってよ。確かに翼は昔からよく知っているけれど、ここ数年はまともに会話すらしていないし、俺、ついこの前まで結婚を考えていたんだよ? そんな歳なのに、今から4年も大学に通う翼と一緒に暮らしていけない。30歳超えちゃうよ! 彼女と翼の両立は無理。どこかで暮らせなくなるときがくるよ。それに俺、浮気した彼女と住んでたあの家に、そんなに長く暮らし続けたくないんだが? 翼とも何話したら良いか分かんないよ、気まずさしかないわ」 「航兄、興奮してしゃべりすぎー!」 「そりゃこうなるだろうが! 小春、お前俺の味方なんじゃなかったのかよ」  自分の気持ちを落ち着けるタイミングが分からない。先週から一体何なんだ?  急に色んなことが起きるし、しかも俺にはどうにもできないことばかり。  誰も俺の話を聞こうともしてくれないし、あまりに一方的だ。 「元カノとの思い出を翼で塗り替えればいいんじゃない? 翼はずっと良い子だよ。裏切らないよ。昔から何も変わんないし、翼もお兄ちゃんと住みたいって言ってたよ」  混乱して頭を抱える俺を見て、小春がけらけらと笑う。  さっきまで気を遣ってくれていた優しい妹は消えてしまった。  しかも地味に元カノという言葉にも傷つく。そうだよもう、彼女でもなく、華と気軽に名前を呼べる関係でもないんだ。

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