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季節外れの台風-17
「ちょっと連絡してみるわね」
俺が何も許可していないのに、母さんは誰かに連絡し始めた。おそらく、というか絶対に翼の母親だろう。美香 さんだ。
美香さんが常識のある人で、「航大くんに申し訳ないから」と断ってくれたら良いが、あの人に限ってそれはないし、もう連絡されてしまったら終わりだ。
ふわふわしている美香さんは、「えっ、ラッキー! もうお部屋探さなくて良いんだ〜!」くらいにしか思わないはずだし。
それなら……もう、翼本人に断ってもらうしか……。
ダメージを受けたばかりの胸をさすりながら、小春を近くへと呼んだ。
「小春、母さんに乗せられすぎ。そもそも、どうして翼が俺と暮らしたいって言うんだよ。普通に考えて暮らしたいわけないよな? 俺と住むってさすがに翼も可哀想だよ。せっかくの大学生活が俺とスタートって、罰ゲームだろ? な? だから小春、翼のためにも……」
俺が嫌だと言っても小春には通用しないから、翼の立場で考えてみろよと促してみる。
「小春、もしさ、翼にお姉さんがいて、小春がそのお姉さんと4年間住むんだよって言われたら、お前嫌だろ?」
「それは嫌だよ」
「そうだよな? じゃあ翼も同じはずだろ?」
俺の気持ちが分からないなら、翼の気持ちを自分の気持ちに置き換えて考えてみてくれ。
それでも積極的に同居を勧めるのであれば、もうどうしようもないけれど。
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