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季節外れの台風-19
「あのさあ、俺の傷全然治ってないのに、さらにこじ開けるのやめてくれない?」
自分の気持ちだけではなくて、実家に帰るまで家族に何て伝えようと悩んでいた自分が馬鹿みたいだ。
もはやネタとして扱われているとしか思えない。
「あ、来た!」
「来た、じゃなくて!」
そうこうしているうちに、インターホンが鳴った。母さんが玄関まで走って出迎える。
家が徒歩数分のところにあるせいで、連絡から到着するまでがあまりにも早い。
この感じだと俺の予想通り、美香さんは母さんからの提案にすぐに乗ったのだろう。
待ってました、とでもいうようなスピード感だ。
「お邪魔します! 航大くん久しぶり〜! もう、どんどんかっこよくなるじゃん!」
「……はぁ、どうも」
推しのアイドルでも見たかのように、美香さんは俺を見てきゃーきゃー騒ぎながら手を振っている。
この人何も変わらないな。
かっこいいと褒められるのは別に悪いことではないけれど、俺のこれからの人生が大きく変わることを重いこととして考えてくれていない美香さんに愛想を振り撒く余裕が今はない。
「……あっ、」
その後ろから、少し遅れて翼がやってきた。
ぱっちりとして可愛らしかった目は、かなりキリッとしたように見える。それでも相変わらず目力がすごい。
数年ぶりの再会だから、会ってないうちに髪も染めて不良になっていたらどうしようかと思っていたけれど、身長が伸びて身体がゴツくなって、少しだけ大人っぽくなっただけだった。
けれど、俺からすればまだ幼さの残る可愛いガキのままだ。それだけがこの状況の中で救いに思えた。
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