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季節外れの台風-20

「翼、久しぶりじゃん」 「うん、久しぶり」  さっきまで美香さんの後ろにいたくせに、いつのまにか俺の正面に立っていた。 「うお……」  てっきり俺と同じくらいかと思っていたけれど、正面にいる翼は俺より数センチ高いくらいになっていた。  目線が……微妙に上で、それが何だか悔しい。  目にかかりそうなくらいに伸びた前髪はゆるくうねっていて、コイツ……パーマかけてんのかと顔全体を見ると、耳にゴツめのピアスも見つけた。    やっぱり勘違いだったかもしれない。過去の可愛い翼フィルターが俺を邪魔していたんだ。  可愛いガキ……ではなくなっている……。  そう思いながら視線を翼の目へと戻すと、目の下のほくろが以前より濃く見えた。  何か色気すごくないか? と、何も言えなくなり、吸い込まれそうな瞳から顔ごと逸らす。  そのまま一歩下がると、翼がさらに一歩分距離を縮めてきた。 「ところで俺、航大と住んで良いの?」 「……いや、まずさ、久しぶりに会った余韻を大切にするべきじゃないか?」 「余韻って? 例えば?」  「あ、あとさ、住んで良いのかって言うけどさ、そもそもお前、俺と住みたいの? 俺たち久しぶりに会うんだぞ? 気まずさとか遠慮とかないわけ?」 「気まずさと遠慮? ないかな。俺は航大と住みたいよ」 「住みたい!? 即答じゃん。……最近の若い子の思考は分からなすぎる」

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