21 / 186

季節外れの台風-21

「航大って、俺より9くらい上だもんな、おじさんじゃん」  視線を俺へと下げた翼が、クククッと嫌な笑い方をする。 「住ませてもらう人の言う言葉か?」  思わずデコピンをすると睨みつけられたけれど、完全に翼が悪いだろ。 「でも俺、あの家の家賃ひとりで払って、水光熱費と食費も全負担とかさすがに厳しいよ。社会人5年目でそこまでの大金はないよ?」  これまでは折半はせずとも、2〜3割ほど負担はしてもらっていたから、それを全てひとりで支払うのはきつい。  まして男ふたりなら食費がけっこうかかるだろうし。 「あ、それについてはうちの美香が払うし、俺も来月からバイト始めるから。心配しないで。ちゃんと金は入れる」  さっきまではややふざけた雰囲気のあった翼の態度が変わり、声も真面目なトーンになった。  具体的なお金の話を出したからか、いよいよ一緒に暮らす話を詰めると分かったのだろう。  翼を見ていると、住む家が見つからないからだとか、金銭面で楽できるからだとか、そういう理由だけで俺との同居を希望しているわけではなさそうだ。  ちゃんと誰かと暮らす不自由さも翼なりには分かっていて、覚悟して、それでも俺と一緒に暮らすつもりなんだな? 「そこまで言われたら断れないかあ」 「せっかくのチャンスだから、断らせるわけないじゃんか」 「チャンス? そんなに住む場所なくて困ってたのかよ……。とにかく俺は、お前が子どもだからってお世話しないよ。お金の負担は俺のほうが多くて良いけど、家事だって一人暮らしでやるようなことはしっかりやってもらうからな」 「もちろんそのつもりだよ。それにもう4月で19歳だし、俺だって子どもじゃねえから」  

ともだちにシェアしよう!