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季節外れの台風-22
よろしく、のつもりなのか、翼が手を差し出した。流れでその手を握ると、もう片方の手も重ねられた。
「航大、ありがとう」
顔をくしゃりとして笑った翼に、昔を思い出す。俺が何かをしてあげるたびにいつも、ありがとうと言って、こんなふうにくしゃりと笑っていたな。
「変わらないな」
「え?」
「いや、なんでもない」
きょとんとする翼の頭を雑に撫でると、それを見ていた小春が目を輝かせ、「翼、やったね!」と、今度は翼に抱きついてきた。
「何が、やったね! なわけ?」
まるで大型犬でも愛でるかのように、翼に自分の頬を擦り寄せている小春を小突くと、少しの間を空けて「……えっ、だって翼の住む家が決まったから?」と、はっきりしない様子で返された。
変わらずふたりはくっついたままで俺を見ている。
翼は俺の手を握ったままで、さすがに手を離してほしいと思いながら、翼の目と手に交互に視線を送ると、「あ……」と気づいた翼がすぐに離してくれた。
というか、このふたり……。
「ねえ、仲良いんだし、小春と翼が住めばいいんじゃないの? ルームシェアすればいいじゃん」
これだけ仲良しなら、そのほうが楽なんじゃ?
男女とはいえ、ふたりの間に何もないのは分かるし、何かあったとして中途半端な関係で終わらせられるものでもないだろうし、安心安全じゃん。
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