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季節外れの台風-23
「やだよ。ずっと同じ話と同じ相談しかされないからうんざり」
「ばっか、余計なこと言うな!」
「余計なこと言ってないじゃん! ほら、すぐこうして私に怒るから無理」
さっきまでくっついていたくせに、ふたりは掴み合いの喧嘩なのかじゃれあいなのか分からない何かを始めてしまった。
さっきはもう子どもじゃないと言われたけれど、どう見ても子どもでしかない。
「お前らもういいわ」
ふたりを置いて、少し離れたところで盛り上がっている母さんと美香さんのところに行くと、俺に気づいた美香さんがキラキラとした目で俺を見つめた。
「航大くん、本当に助かったよ。ありがとうね」
「いや、まあ、はい」
「あの子昔から航大くんのこと大好きだから、航大くんにすぐ会えるようにってあの大学にしたのよ」
「え?」
「できるなら一緒に住みたいとか馬鹿みたいなこと言って、部屋探しが進まなくてどうしようかと思ってたけど、まさかねぇ? そのおかげで結果的に暮らせるなんて」
「はあ……」
「我が儘だろうけど、よろしくね」
翼と同じように差し出された美香さんの手を握り握手をするも、どこかすっきりしない。
翼ってそんなに俺に懐いていたっけ?
思い返してみれば、中学のときも高校のときとも気が付けば家に来ていて、「航大遊ぼう!」と誘われていた気もする。
それを俺が、学校の友人たちと過ごすからと毎回断っていたんだよな。
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