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季節外れの台風-25

「いや、そういうことじゃなくて。……分かった、じゃあ荷物まとめとく。航大、ありがとう」 「で、何でお前、そんなに顔赤いの? 小春と本気で喧嘩しすぎだろ。ほどほどにしとけよ」 「……っ」  俺の言葉に翼は勢い良く頬を押さえ、それから少しだけ潤んだ瞳で俺のことを睨みつけた。 「なに? 恥ずかしい?」 「航兄、あんまり翼をいじめちゃダメだよ」 「小春うるさい。お前もほどほどにしとけよ。仲良いのは良いことだけど」  さっきは遠慮がちに触れた小春の髪に、今度はそれなりの強さで触れた。綺麗に結んであった髪が乱れると、小春に思いっきり尻を蹴られた。  と、同時に、さっきと同様、注目させるためか母さんが手を数回叩く。  手の合わせ方が良かったのかきれいに音が響き、それに母さんが照れた様子を見せる。  うちの家族、みんな陽気すぎだろ。 「じゃあ、航大と翼くんが同じお部屋で暮らすことが決定いたしました!」  母さんが再度手を合わせようとすると、俺以外の全員も同じように手を合わせ、それから一斉にパチパチと叩く。   「ねえ、まじでなんなの……」  期待に満ちた視線を向けられ、戸惑ってしまう。  今日帰省するまで、俺がどうなるかなんて分かっていなかったはずなのに、どうしてこれだけ団結できるのか? と、疑問もあるけれど、それだけ俺の知らない間の翼が良い子だったってことなのかもしれない。

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