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季節外れの台風-26
「俺以外の盛り上がりがすごいんだけど……」
「イェーイ!」
小春が拳を天井に向かって突き上げ、誰よりも楽しそうに笑っている。
「小春が住むわけじゃないのに? 訳分からん……」
まあ、他人と価値観の擦り合わせをしながら生活していくことに少し慣れた頃だし、別に翼とは恋人ではないんだから「うまくいかなかったらどうしよう」と不安になることもない。
こんなにタイミングでなければ翼と暮らすイベントも発生しなかっただろうし、ある意味特別なことなのかもしれない。
そう思うと、みんなの盛り上がりも理解できる気がする。不思議で、少し面白い状況だし。
「みんな楽しそうだな。俺の家なのに」
「航大は楽しみじゃないの?」
ぼそりと呟くと、いつの間にか翼が俺の横に立っていた。
「え? 俺が楽しみだと思う要素そんなになくない?」
「……楽しみにしててほしい。俺が楽しませるから」
グッと顔を覗き込まれ、思わず翼から顔を逸らすと、拗ねたように唇を突き出した。
「てか別にさ、何か楽しませないと一緒に暮らせないわけじゃないから、そんなに気にすんな。家賃は美香さんが払うって言ってるんだし」
「そういうことじゃない」
「は? じゃあ何?」
「……今はいい。いつか言う」
「はあ?」
翼は変わらず拗ねたままの表情で、拍手を終えて食事の準備を始めた小春たちのほうへ行ってしまった。
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