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季節外れの台風-27
◇
「どうぞ、入って」
「……お邪魔します」
月末になり、翼と手続きを済ませた後、ようやく家へと連れて来た。
部屋に入るまでは少し緊張した様子だった翼も、一通り部屋を見る頃にはけろっとしているように見えた。
「なんかシンプルな部屋だな。色も落ち着いてるし」
「まあな」
元々は棚には小物が飾られ、ふたりの写真もたくさん置いていたけれど、翼が来るまでの間に写真は全て処分した。
華の趣味で置いていた小物も彼女が持ち去ったのか、それも全てなくなっていた。
華が選んだピンクやオレンジ色のカーテンやカーペット、キッチンマット、トイレマット、ベットカバーなども全て買い替え、黒やグレーの落ち着いた色味に変えた。
いっそのこと翼と買い物に行っても良いかもしれないと考えたこともあったけれど、新学期に向けて余計なことでバタつくのは可哀想だろうと思い、あえて誘わなかった。
「まあ、うちはこんな感じかな」
最後に寝室を見せると、並んだベッドに翼が一瞬かたまった。
シーツ類は買い替えていたものの、並べられたベッドは生々しかったかもしれない。
とはいえ、新しいベッドを用意するよりもこのまま使ったほうが安いし良いだろう。
「一応、彼女とは寝室が同じで、残りの2部屋はそれぞれが使う形にしていたんだけど、一緒に寝るのもあれだから、翼のベッドは翼の部屋に運ぼうか?」
隣に立っている翼にそう尋ねると、黙り込んだままでベッドを見つめていた。
「翼……?」
隣に立っている翼の顔を覗き込むと、ベッドを見つめたまま、「ここで彼女と寝てたんだ?」と、ぼそりと呟いた。
「……まあ、うん。そうだって言っただろ」
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