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季節外れの台風-28
翼の意図が分からないけれど、そう返事をすると、これまでベッドへ向けていた視線を突然俺のほうへと動かした。
「でももういないんだな」
「だから何だよ」
わざわざ、そんなことを言うか? と思いながら、翼を睨むようにして見ると、フッと意地悪く笑われる。
「航大はずっと彼女と同じ部屋で寝てたのに、今さらひとりで寝られるの?」
「はあ!? 俺は彼女と暮らす前からひとり暮らししていたし、当たり前にひとりで寝てたわ。ふざけたこと言うなよ」
「ははっ、怒んなよ」
もしかしたら、翼に部屋の中を紹介する俺の顔が強張っていたのかもしれない。
華の浮気が発覚したのもこの寝室だったし、彼女の無防備な寝顔を見る度に幸せを感じていた身としては、寝室への思い入れが1番強いから。
実際に翼に揶揄われたことで、声がよく出て、表情も動いた。そのおかげか、少しだけ気持ちが軽くなったような気もする。
敢えてそうしてくれたのかは翼にしか分からないし、わざわざ聞くことはないけれど、もし本当にそうだったらされないよりは嬉しいかもと、寝室の扉を閉めながらそんなことを考えた。
「これからは俺と航大の家ってことだよな」
リビングへと戻り、ソファに座るように促すと、翼が俺の手首を掴んだ。
「……まあ、そうなるね?」
思った以上の強さにびっくりして、若干声が裏返る。それをまた揶揄われるかもしれないと構えたけれど、翼は何も言わずに部屋をぐるりと見渡した。
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