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季節外れの台風-30
「お前なあ! 絶対に、勝手に彼女を連れ込むなよ。彼女以外もな!」
何なんだよこの状況は! と思いながら、さらに勢い良く手を振り回してみたけれど、翼は笑っているだけで、やっぱり離してはくれない。
「はいはい。何があっても連れ込まみませんよ。そんなの見てたら分かることだから」
「……何が分かるんだ。ピアスも開けてパーマもかけて、大学デビューしてモテる気しかないだろ、調子乗るに決まってる」
実際、元から顔は整っているほうだったけれど、久しぶりに見た翼は男の俺から見てもカッコよくなったと思う。
オシャレにも気を使うようになっているし、時間の問題かもしれない。
まあそうなれば、一緒に暮らさなくなるだけの話だ。
「絶対にないって証明しても良いけど、困るのは航大だよ」
さっきまで笑っていた翼は、急に真面目な表情になり、片方の手を俺の腰へと回すと、グッと自分のほうへと抱き寄せた。
「……なんで、俺が困るの」
胸板を押してみるけれど、びくともしない。
そんなに怒らせることを言ったっけ?
「考えても分かんないなら、気軽に聞かないことだね」
耳元で囁かれ、そのままそこに軽いキスを落とされる。
「……はあ?」
「とりあえず必要なものがあったら、一緒に買い物してくれるんだろ? 俺、いくつかほしいものあるから」
戸惑う俺をよそに、翼はあっけなく俺を解放すると、そのまま鞄を手に取り玄関へと歩き出した。
一瞬だけ触れられた耳が熱く、それが頬にまで伝染したようで熱を帯びる。
手の甲で冷やしながら、「ふざけんなよ!」とだけ叫び、俺は車の鍵を手に取った。
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