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一体なんなんだ?-2
「お前まじで無理すんなよ。そんなことしなくて良いから」
「何で?」
俺の発言が不満だったのか、翼が眉間に皺を寄せる。
いやでも俺が正しいだろう? こんな家政婦みたいなことをしてほしくて、翼と暮らすことを決めたわけではないんだから。
靴を履き、爪先をトントンと床に当て、踵を入れ込んだ。
「あのさ、自分のことだけしてくれたら一緒に暮らして構わないって話だったじゃん。家賃は美香さんからきっちり半分もらっているし、お前だって金を入れてるだろ? それなのに家事までやって……」
学業にバイトに家事に、色んなことを頑張りながら、家に金まで入れてくれている。さすがに翼の金を使うのは気が引けるから、こっそり別で貯めてはいるけれど、それでももしかして本当に4年間済む気があるとしたら、このペースでは持たなくなるだろう。
「何だ、そういうこと? だったら関係ないね。俺がやりたいからやってんの。はい、航大のお弁当」
俺の心配をよそに、翼は目を細めて笑うと、ランチバッグを差し出した。
「本当さあ、もうさあ……! ありがたくもらうけど、無理だけはすんなよ」
これまでも何度か作ってもらっているけれど、今日もか……と申し訳なくなりながらも受け取ると、翼は嬉しそうに「行ってらっしゃい」と手を振った。
さすがに何かお返しをしなければと、そう思いながら俺も手を振り返し、仕事へと出かけた。
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