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一体なんなんだ?-3
翼に無理をするなと言った翌日、帰宅すると玄関に翼の靴があるのに出てこなかった。
いつもならすぐに出迎え、「お帰り!」というのに珍しい。
何かおかしいと思いリビングに行くも、そこにも翼がいない。
翼の部屋にもおらず、最後に真実を確認すると、翼が苦しそうに寝ていた。
「……翼? 大丈夫か?」
額を触ると信じられないくらいに熱い。
「熱あるじゃん」
今日で暮らし始めて1か月で、大学進学に引っ越しもして、環境の変化で気を張っていたはずだ。
それなのに、俺を気遣って家事までやって、相当な疲れが溜まったんだろう。
「翼、これ飲める?」
うなされている翼を起こし、ぼんやりとしたその口元にコップを押し付けた。ゆっくりと水を流し入れ、こくこくと喉が動くのを確認する。
「お前けっこう熱あるぞ。病院行くか?」
幸いにも、今日は家の近くの外勤先から直帰して、いつもよりかなり早い帰宅だった。
病院が閉まる時間までまだあるし、明日は土曜日だし、感染症の可能性があるかもしれないし、早いほうが良さそう。
「もしかして、朝から熱あった?」
「……あった」
「大学は?」
「休んだ……」
「そんな状態でひとりだったんだな。連絡すれば良かったのに。ごめんな」
迷惑をかけたくないと拒否する翼を支えながら立ち上がらせると、そのまま車へと押し込んだ。
「航大、仕事は……?」
「今日は早く終わったんだよ」
「ごめんね」
体調が悪いのだから、自分のことだけを考えれば良いのに、翼は車内でずっと「ごめん」を繰り返していた。
俺に対する態度が大きいから、遠慮がないと思っていたけれど、家事を一生懸命やることも、こうしてすぐに連絡できないことも、翼的に自由に振る舞いにくい空気感があったのかもしれない。
俺のほうこそごめんと思いながら、ミラー越しに後部座席にいる翼を見ていた。
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