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一体なんなんだ?-5
「食べたら薬を飲んで、また寝ときな。明日は休みだから俺も付き添えるし。さすがにバイトは休みの連絡を入れておけよ」
「……ありがとう。明日はバイト、ない」
「そっか。それなら大丈夫だな」
ぽんぽんと頭に触れると、翼は俺のその手に頬を擦り寄せた。
「へへ……、航大の手、冷たい」
「熱冷ましのシート、貼るか?」
「ううん、いらない。でも、しばらく航大の手を貸して……」
珍しく甘えモードの翼を見て、何だか少しだけ恥ずかしくてそわそわする。
やっぱりただの可愛いガキじゃないかと、そう思いながら、もう片方の手も翼の頬に当てた。
ただ手を当てるだけで、こんなに喜ばれることは今後はなさそうだ。
「翼、頼むから無理しないで。確かにさ、俺から積極的に一緒に住もう! と誘ったわけではなくて、うちの親とか美香さん、翼たちから言われて渋々納得したのが始まりではあったけどさ」
「……ん、」
「翼と住む覚悟を決めて受け入れてるんだから、家事しないと追い出すとか、そういうのも絶対にないし。最低限はしてほしいけど、その他は普通に大学生活を楽しんでよ。な?」
俺は少しでも冷やしてあげようと、手のひらと甲を交互に翼の頬に当てた。
それからやっぱり熱冷ましのシートを貼ったほうが良いと、冷蔵庫で冷やしておいたそれを、ゆっくりと翼の額に乗せる。
翼はされるがままに額を出し、貼った瞬間は冷たさに顔を歪めたけれど、すぐに心地良さそうな表情になった。
「俺、航大の迷惑じゃない……?」
「迷惑じゃないよ」
「……そっか」
翼は立ったままの俺に抱きつくようにして手を伸ばすと、ゆっくり背中に回した。
お腹あたりに押し付けられた翼の頭を優しく撫でる。
「薬飲んで、寝ような?」
「……うん」
小さい頃は俺に甘えてばかりだった翼を思い出し、懐かしくなった俺は翼の髪に指を入れ、くしゃくしゃと撫でた。
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