……いや、だから何してんの？　熱下がったアピールにしては違うよな？ 　昨日はやたら甘えた様子があったとはいえ、熱が下がったのなら話は別だ。体調不良のときは、意図せず寂しくなったり甘えたくなるのは分かるけれど、それとこの触れ合いは何か違う気がする。 　もうそろそろ起きたほうが良いかもしれない。とりあえず寝返りでもうってみるか、と翼側に倒れようとしたとき、俺が寝返りをするよりも先に、翼がベッドから降りていった。 　……ん？　終わり？　何が始まったのかも分からなかったけれど、気が済んだのか？ 　となると、俺がわざわざ寝返りをうって、あたかも今起きました感を出す演技は必要なくなった？ 　それなら良かったと、そう思いながら目を開けようとしたタイミングで、今度は頬に翼の息がかかるくらいに顔を近づけられていることに気づいた。 「航大……、寝てるよな？」 　……ねえ、さっきから何！？　寝てはいないです。寝たふりをして起きるタイミングを逃しました！　 　寝たふりがバレると気まずいから、目を開ける前に翼の気配に気づけたことは良かったけど、開けなかったら開けなかったで、今から何が始まるの！？　何してるんだよ……！ 　混乱でパニックになっているけれど、目を開けなくても何となくすぐそこに翼がいるのは分かる。この感じは、絶対に俺の顔を覗き込んでいる、はず……！ 　寝起きの顔って汚いし、何なら髭も少し生えているしで嫌なんだが？　翼、お前何がしたいんだよと、脳内でぐるぐる考えたせいで額にじわり汗が滲み始めたとき、唇の端あたりに柔らかな感触がした。