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一体なんなんだ?-10

「航大の寝癖、鳥の巣みたいだな」 「……うるせえわ!」  俺だけが動揺しているみたいで、翼からは余裕しか感じない。  自分の心臓の音が内側から耳に響いて、絶対に翼にも聞かれてしまったと思い、そのせいで翼以外のことが考えられなくなってしまう。  寝起きなのに清潔な匂いがするし、少し高い体温に心地良さすらある。   何だこれ何だこれ何だこれ……!    ぐいっと胸板を押し、どうにか翼から離れることができたけれど、すぐ目の前にある翼の顔に「ぎゃあ!」と叫んでしまった。 「俺に失礼じゃない?」 「お前が近いからだろ。いちいち、近い、から」 「近いと問題ある? ガキに触られてドキドキしたの?」 「……は、はあ!?」    翼は笑いながら俺から離れると、ソファに戻った。 「顔、洗っておいでよ」  それから一緒にテレビを見ようと、ソファの隣をぽんぽんと叩いた。  何事もなかったような態度にイライラしながら言われた通りに顔を洗い、翼の隣に座ると、翼は満足そうに笑い、俺のほうへと寄って座り直した。 「だから近いって」 「え、そう? 意識しちゃう?」 「……何の意識だよ」  これ以上何か言ったとしても翼のペースにのまれるだけで、何の意味もなさそう。  少し触れる肩にどうしても意識が向いてしまうけれど、翼にそのことで何か言われたくはないから、俺は必死に視線をテレビに向けた。

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