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一体なんなんだ?-11
◇
「……なあ、翼。これマジ?」
「マジだよ。航大が好きに計画しろって言ったじゃん」
「いや、言ったけどさあ」
1泊分の荷物が入った鞄を、思わず落としそうになるくらい、目の前にある大きな旅館に圧倒される。隣の翼を驚いて見ると、クククとまた嫌な笑い方をしていた。
先日、バイト代が貯まったからと旅行に誘われ、翼と旅行? とは思ったものの、バイト代を俺との旅行代にあてたいと言う翼を謎に可愛いと思って折れてしまった。
どこを選ぼうが、金は俺が払うつもりでいたから、好きに計画しろと確かに言ったけれど、翼は最終的に俺が支払う気があると知らないで選んだはずだ。
それなのに、ここ……? てっきりテーマパークでウェーイ! かと思っていたのに。
「とりあえず行こう」
「あ、待てよ」
立ち止まったままの俺の荷物を奪うと、翼が先に受付へと歩き出し、俺は慌ててその後を追った。
受付を済ませて鍵をもらうと、すぐに部屋へと向かった。
ホテルみたいにカードではなく、鍵に木製の四角い棒が付けられていて、ザ・旅館という感じがする。
こういうところに来るの、いつ振りだっけな。
「意外だった?」
部屋の鍵を開けながら、翼は俺を見ずに尋ねた。
「うん、意外だった。渋いし」
「航大は渋いの嫌?」
「全く嫌じゃない。俺はこういうゆったり旅が好きだけど、せっかくなのにお前は楽しめるの?」
「俺は航大が楽しんでくれるなら、嬉しいし楽しい」
「そんな彼氏みたいなこと……」
自分で彼氏みたいだと言いながら、急に恥ずかしさが込み上げてきたとき、畳の良い香りが広がった。
窓の向こうには川が流れていて、その音が心地良い。
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