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一体なんなんだ?-12

「うわあ……すごい綺麗だな」 「でしょ? 景色の良い部屋にしてくれたんだ」  景色を見るだけじゃ足りず、窓を開け、綺麗な空気を吸い込んだ。  そんなに都会に住んでいるわけではないけれど、やっぱり自然の空気とは全然違うな。  川の水も透き通っていて、近くで見たら魚も探せそう。 「……本当よく見つけたなあ、こんな良い旅館」  振り返って、お礼の気持ちを込めて翼を見ると、穏やかな表情で俺を見ていた。  まるで俺が子どもで、翼が保護者みたいじゃないかと、気まずくなってまた窓のほうへと視線を動かす。  何だ、あの表情は。 「良い旅館だよな。何年か前に見つけたんだ」 「結構前から知ってたんだ?」 「まあね」  翼は俺の隣に立つと、同じように外を眺めた。ちらっと見る横顔があまりにも整っていて、なぜだかそれにドキドキした。 「いつか来たいと思ってたからなあ。叶って良かった」 「……へえ」  誰と? 彼女と? と思ったけれど、さっきの俺の「彼氏みたい」発言がせっかく流れてくれたのに、自ら掘り起こすみたいで嫌だったから、「へえ」とだけ返した。  それでも、何年も前から来たいと思っていたこの旅館に、俺とで良かったのかと複雑な気持ちになる。  でもすごくポジティブに考えるなら、あれだけ喜ぶ俺を嬉しそうに見ていたのだから、俺とここに行くって決めたことは、翼の中では悪いことではなかったのかもしれない。  ……そう思いたくなる自分の心理を考えると、それも複雑だけれど。

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