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一体なんなんだ?-13

 大浴場に入った後、部屋の露天風呂にも入った。  風呂に誘われたときは、「航大と一緒に入れる」とふざけたことを言われるかもしれないと警戒していたけれど、大浴場でも翼はそんなテンションになることもなく、部屋の露天風呂も「ゆっくりしてね」と見送られただけだった。  これじゃあ俺だけが期待していたみたいじゃないか?   別に一緒に入りたいとは思わないけれど、いつもの翼のノリなら言ってもおかしくないのに。 「航大、そろそろ夕飯の時間」 「もう? 早いな」    ふたりで揃いの浴衣を着て、指定された会場に行くと、既に綺麗な器に入った料理が並んでいた。  お飲み物は何にされますか? と尋ねられ、烏龍茶の翼に遠慮することなく、俺はビールを注文した。 「好きに飲んでね」 「ありがとう」 「それからこっち向いて」 「え?」    お品書きを見ながら、これから運ばれてくる料理への楽しみが増している俺に、翼はカメラを向けていた。  顔を上げるとカシャっと撮られる。絶対に変な顔をしたから消すように伝えたけれど、撮った写真を見た翼は満足そうだった。 「変じゃないよ。浴衣の航大を初めて見たから記念にね」 「それならお前も撮らせろよ」  翼にカメラを向けると、隠すことも嫌がることもなく、まだ少し湿っている前髪をかきあげた。  長めの前髪がなくなり、目元が明るくなるからか、目の下にあるほくろが際立つ。整った顔を見て、思わず手が止まってしまった。 「俺の写真がほしいの?」  ゆっくり口角を上げる翼に、思わずスマホを持った手を下ろす。

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