43 / 186
一体なんなんだ?-13
大浴場に入った後、部屋の露天風呂にも入った。
風呂に誘われたときは、「航大と一緒に入れる」とふざけたことを言われるかもしれないと警戒していたけれど、大浴場でも翼はそんなテンションになることもなく、部屋の露天風呂も「ゆっくりしてね」と見送られただけだった。
これじゃあ俺だけが期待していたみたいじゃないか?
別に一緒に入りたいとは思わないけれど、いつもの翼のノリなら言ってもおかしくないのに。
「航大、そろそろ夕飯の時間」
「もう? 早いな」
ふたりで揃いの浴衣を着て、指定された会場に行くと、既に綺麗な器に入った料理が並んでいた。
お飲み物は何にされますか? と尋ねられ、烏龍茶の翼に遠慮することなく、俺はビールを注文した。
「好きに飲んでね」
「ありがとう」
「それからこっち向いて」
「え?」
お品書きを見ながら、これから運ばれてくる料理への楽しみが増している俺に、翼はカメラを向けていた。
顔を上げるとカシャっと撮られる。絶対に変な顔をしたから消すように伝えたけれど、撮った写真を見た翼は満足そうだった。
「変じゃないよ。浴衣の航大を初めて見たから記念にね」
「それならお前も撮らせろよ」
翼にカメラを向けると、隠すことも嫌がることもなく、まだ少し湿っている前髪をかきあげた。
長めの前髪がなくなり、目元が明るくなるからか、目の下にあるほくろが際立つ。整った顔を見て、思わず手が止まってしまった。
「俺の写真がほしいの?」
ゆっくり口角を上げる翼に、思わずスマホを持った手を下ろす。
ともだちにシェアしよう!

