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一体なんなんだ?-15

 なんだかんだ騒ぎながらも、運ばれてくる料理がどれもおいしくて満足度が高かったからか、しばらくしてからは翼にカメラを向けられようがどうでも良くなった。  ただただ料理に感動する時間になり、とうとう最後のデザートが運ばれてきた。  お腹的にも満足なのに、この時間が終わってしまうことが寂しくもある。  そしてこんなふうに思えるくらい、素敵な旅行を計画してくれた翼に改めて感謝の気持ちが湧いた。 「……ありがとうな。何かこういう穏やかな時間を最近取れていなかったから、沁みるわあ」  デザートの豆乳プリンをゆっくり口に含みながらそう伝えると、「……航大も色々あったからね。そこに俺も押しかけてしまったし」と翼が眉を垂らした。 「……そう、色々あったからなあ」  翼が環境の変化でストレスを感じ熱を出したけれど、熱こそ出さなかったものの、俺にも環境の変化はあった。  華と別れたことをゆっくり悲しみ、少しずつ乗り越える暇もなく、今日まで全く新しい生活をバタバタこなしてきた。 「……っ、」  今まで華との生活を振り返る余裕がなかったのか、あえて避けていたのかは自分でも分からないけれど、こうして穏やかな時間を過ごす中で、ふと、自分へと意識が向くのを感じた。  華との生活を思い出し、目頭が熱くなる。  

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