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一体なんなんだ?-17
翼は手を広げると、俺を優しく抱きしめた。
翼のお腹あたりに頬を押し付ける体勢になり、後頭部をよしよしと撫でて励ますかのように触れられた。
「……みっともないな、ごめん」
意図的に自分で取り出したわけではないものの、逃げられない状況になるとまだつらい。
今後は見えないように蓋をするのではなく、向き合って昇華していけたら良いんだろうな。
「気にしないで。俺がいるから。ね?」
とんとんと、背中を軽く叩かれ、少しずつ落ち着きを取り戻していく。翼なりに俺を気遣ってくれたのだろうか。
「ありがとうな」
華とは色々あった後で、すぐに翼と暮らす話が出てきて、家族に強引に振り回す形で始まった生活だったけれど、ひとりでいなくて済んだから、翼と一緒に住む選択をして良かったのかもしれない。
こうしてつらいときに寄り添ってくれる人も誰もおらず、どうしてダメになったのかと、そればかりを考えてずっとぐるぐるしていた自分を想像できてしまうから。
しばらくは誰かとの将来を考える余裕はないし、こうして俺のことを気遣ってくれる翼のことを、しっかり大切にしたほうが良い。
今日を過ぎたらまた、保護者として翼の面倒をちゃんと見るから、今日くらいは甘えても良いだろうか。
翼に抱きしめられて、ひどく安心した俺は、手を回して抱きしめ返した。
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