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一体なんなんだ?-19

「そうじゃなくて、心配になるし、俺も悲しいから」 「お前が、悲しいの? なんで?」 「それは言えない」  俺の頬から手を離した翼は、背を向けると、タオルを持って露天風呂へと歩き出した。  思わず追いかけ、翼の浴衣を掴むと、わざわざ帯を巻いていなかったからあっさりはだけてしまう。  肩が丸出しになり、別に恥ずかしがる関係性でもないのに気まずさを感じ、視線を逸らした。 「でもさ、言えないって、何かあるってことだろ? 何でもないって答えるんじゃなくて、言えないって言われると気になる」  浴衣を掴んだままでそう言うと、翼は俺のほうに向き直った。  俺から質問したのだから、顔を上げて話をするべきだとは思うけれど、そうしたら絶対に翼の裸が視界に入ってしまう。  どんな顔をしているかも分からないし、色々見たくない気持ちがあって、失礼だけれど頭を下げたままでいることにした。  でも、翼はそれを許してくれずに、俺の顎を掴むと、くいっと上げ、無理やり視線を合わせられる。 「航大は聞いた責任を取れるの?」  「……え? 怖い言い方するなよ。やっぱりもういい、風呂入ってこいよ」  さっきまでの温かで穏やかな視線ではなく、逃げられなくなるような、そんな目をしていた。  顎に手を添えられているだけなのに、身体が動かない。  怒らせたわけではないのだろうけれど、何を考えているのか分からない。 「……ごめん?」 「はっ、何で疑問系なんだよ。とりあえず入ってくるからゆっくりしてて」

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