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一体なんなんだ?-20
翼が露天風呂に行った後、俺はテレビをつけた。
それから洗面所に行き、使い捨ての歯ブラシを開ける。良い旅館でも変わらず硬い歯ブラシで、いつもより優しい力で磨いた。
「……んー、分からん」
距離を詰めてくるかと思えば、一定のところで跳ね返されるような難しい距離感に戸惑いながら見ていたせいか、テレビの内容が全く頭に入ってこない。
音としてだけは認識できるから、ただただ騒がしいだけだ。
俺はすぐにテレビを消し、それからスマホでSNSのタイムラインを無駄にスクロールした。
ネット独特の話題で盛り上がっているタイムラインに何にも共感できず、それもすぐに閉じ、ぼーっとしながら歯を磨く。
しばらくして歯磨きを終えると、先に布団に横になることにした。
「翼ー?」
名前を呼んでみたけれど、反応はなく、まだ風呂に入ったままのようだ。
食事の直後に長風呂はしなさそうだけれど、翼も気まずいのかもしれない。だから、なかなか上がってこないのだろうか?
「やばい、眠い……」
このままだと翼が戻る前に眠ってしまいそうだ。ふあ、と欠伸が止まらなくなり、そのせいで涙も流れてくる。
寝たら寝たで仕方ないかと、俺は重くなる瞼に逆らうのをやめた。
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