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聞いてしまった責任-3

◇ 「高寺(たかでら)、今日飲みに行かん?」  珍しく定時で仕事が終わり、それが嬉しくてご機嫌で帰る支度をしていると、同期の中川(なかがわ)に声をかけられた。  彼には入社してからずっと仲良くしてもらっていて、華と別れた後も随分と気にかけてくれていた。  すぐに翼との生活が始まってバタバタしていたせいもあって、最近ほとんど飲みに行けていなかったな。   「あ、良いね。ちょっと待って、連絡する」  当たり前に参加したかったけれど、翼が今日はアルバイトがない日だと言っていたから、俺のご飯を作ってくれる気でいると思う。  連絡を入れておかなければと、鞄の中からスマホを取り出した。 「連絡って、例の同居人?」 「そう、バイトがない日はいつもご飯作ってくれるから、連絡しておかないと」 「それもう彼女やん」 「いや男だから」  確かに彼女のようだ、だとしたらご飯を作らせてばかりの最悪の彼氏だなと思いながら、翼あてにメッセージを送信すると、送信した瞬間に既読がつく。  まるで俺からの連絡が来ると分かっていたかのような早さに驚いていると、ほとんど同時に翼からのメッセージが送られてきた。 「あ、あいつも飲み会みたいだわ」  どうやら翼もバイト先のみんなで飲み会に参加するらしく、バイト終わりに参加する人もいるからか、帰りが遅くなると連絡が来ていた。  翼をひとりで待たせて飲みに行くのは少し気が引けるからちょうど良かった。

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