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聞いてしまった責任-4
「私も入れてー!」
中川と話していると、もうひとりの同期の和田 がひょっこり会話に入ってきた。
人懐こい彼女は、中川同様に良い奴で、ふたりと話していると心地良い。
「お、和田が参加するの珍しくない?」
おそらく彼女に気があるであろう中川が嬉しそうにそう尋ねると、「3人での飲みは、一応遠慮してたんだよ!」と、気まずそうに笑った。
ああ、俺に彼女がいたからか。
中川が和田や俺を飲みに誘う度に和田が断っていたのは、中川が嫌だったわけではなくて、俺に彼女がいたからだと気づいた彼が、俺を睨んでくる。
俺も睨み返し、俺を入れずふたりで飲もうと誘えなかったお前の責任だろ、と視線で伝えた。
伝わったかは分からないけれど。
「じゃあ高寺に気遣ってんだな、そっかそっか」
「そうだよ! だって同期とはいえ、飲み会に異性がいたら嫌じゃない? 私は大人数ならオッケーだけど、数人の飲み会で彼氏が女と飲んでたら嫌だもん」
「えっ、和田って彼氏いたっけ?」
「喧嘩売ってる? いないよ。別にいなくても例え話くらい良くない?」
「煽ったんじゃないから、ごめんて」
今のは俺は何も関係ないぞと中川を見ると、やってしまったという目で俺を見ていた。
どれだけ片思いをする気なんだ。そろそろ気持ちを伝えてみれば良いのに、と思いながら、俺は「この店で良い?」と安い居酒屋を提示した。
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