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聞いてしまった責任-6
さすがにダルすぎるだろと思い、渋々この前の旅行の写真を見せると、「えっ、めっちゃイケメンじゃん!」と和田が食いついた。
それを想定していなかった中川が俺を睨み、だから俺も知らねえよと睨み返していると、和田が「ねえ、この子さ、高寺の斜め後ろにいない?」と、俺の後方を指さした。
「え?」
そんなわけないだろと思い、振り向いて見ると、翼の横顔が視界に入る。
……え、まじでいるじゃん。
「ねえ、実物だよね? 翼くんだよね?」
和田が芸能人でも見つけたかのような反応をし、声をかけてみようよと騒ぎ出した。
確かに声をかけても良いのかもしれないけれど、バイト先の人たちと大人数で飲んでいる翼に対して、「よお、偶然だな」と声をかける勇気は俺にはない。
「嫌だよ、あの陽キャ集団の中に入りたくないし」
自分より明らかに年下で、見たことがない髪色の人もいるのに、スーツのリーマンが声をかけたら、何事? って思われるだろう。
それに翼に、俺のことを何て説明させれば良いかも分からないし。
幼馴染です、一緒に住んでます、って?
「じゃあこっそり連絡してみたら? 後で同じ場所にいましたって知るより良くない? こっちだけ気づいているのはフェアじゃないしね」
そんなことを言いながら、和田が期待しているのは別だと思う。俺からのメッセージに気づいた翼が、翼のほうから俺に声をかけてくることを狙っての発言だろう。
でも確かに、和田の言う通りで、一方的に俺が気づいていて、何なら翼たちの会話を聞いたり、様子を見ているっていうのは、翼からしたら嫌なことかもしれない。
念のため、連絡だけはするべきか……?
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