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聞いてしまった責任-7
俺は写真のフォルダを閉じると、翼あてにメッセージを送ることにした。
【まさかのまさかで、同じ店なんだけど】
送信した後で、もっと別の言い方があったかもしれないと後悔したがもう遅い。
そんな少し恥ずかしい気持ちで画面を見つめるものの、珍しくすぐに既読がつかない。
わざわざ振り向いて確認するも、翼はちっともスマホを見ずに会話を楽しんでいた。
どれだけ話に夢中になっているのだろうか。何だか、それはそれで面白くないんだが。
いつもは俺からの連絡にすぐ既読をつけるのに? こういうときは無視かよ。
「連絡したぞ。でも返事はない。これで満足か?」
スマホを反対側にしてテーブルに置き、注文していたビールを流し込むと、和田に「私は満足したけど、高寺は気づいてもらえなくて拗ねてる?」と笑われた。
「はあ? そんなことで拗ねるかよ」
「席を交代しようか? そしたらよく見えるじゃん」
「えっ、じゃあ俺もそっちに行こうかな」
立ち上がる和田の手を、中川が咄嗟に掴む。
「何で中川まで移動するの? 私と高寺だけが交代すれば良くない?」
手を掴まれていることには大して驚かず、和田がきょとんとする。
俺としては席移動なんて頼むつもりもないし、元の席にいてくれたら良いのだけれど、和田はこうなったら聞かない。
だからと言ってあっさりかわってしまうと、俺が隣に来ることで拗ねる中川を想像してうんざりする。
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