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聞いてしまった責任-9
しばらく一方的に翼を観察していると、話の中心に必ずいるようだった。ひとり輪に入れず固まっているようなことはなくて、翼からも積極的に話しかけている。
俺や小春に対しての翼しか知らないからこそ、同年代と盛り上がる翼は、いつもの翼とは違ったように感じた。
俺も翼からしたら、職場の同僚や上司に見せる姿と翼に見せる姿は違うだろうし、当たり前なことだけれど、でもどうしてか少し寂しく感じる。
「……うげ」
「高寺どうした?」
「いや、何も」
寂しいと感じてしまったことに気持ち悪くなり、俺はビールを流し込んだ。パネルを押してビールを追加注文すると、そのタイミングで「あはは!」と大きな笑い声が聞こえる。
顔を上げて確認すると、翼の横に座っていた明るい髪の女の子が翼にもたれるようにして笑っていた。
……は? 近くない?
翼はその子を拒否することなく、されるがままで何も思っていないようだ。
もしかして翼は、俺以外ともあの距離の近さなのか?
抱きしめたり、キスしたり、頭を撫でたり、そういうことをやっている!?
「高寺、さっきから顔が怖いんだけど」
「なになに? 翼くん?」
和田が振り返り、俺が見たものと同じ光景を見ると、「彼女なのかな?」と無邪気に尋ねてきた。
「……彼女じゃない」
「何で? あんなに近いのに? 高寺が知らないだけじゃないの?」
「いや、絶対に違うね」
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