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聞いてしまった責任-12

「酒と入れ替えられたことも知らないで、のんきに楽しんでんじゃねえよ」 「……はあ?」 「すみません、こいつ今日はここで連れて帰ります。俺は翼の保護者です」  掴んだままの翼の手を引き、無理やり立たせるとそのまま駅へと連れて行く。 「航大、離せって」 「離したらお前、また戻るんだろ?」 「戻んねえよ。だから離せって、痛いわ」 「自分が悪いんだから黙ってろ」 「はあ? 酒を飲まされそうになったとして、何で航大がこんなにキレてんの」  振り向いて睨みつけると、翼は納得できない顔をしていた。  それもそうだと思う気持ちはあるけれど、もう止められない。 「何でって、そんなの……!」  そんなの、何だよ。  自分でも頭がぐちゃぐちゃになり、それ以上言葉が出てこなくなった。  俺は何にここまで怒っていて、何が止まらないんだっけ……? 「航大……? 何で泣きそうなの」 「はあ? 何で俺が泣きそうになんの」 「俺が知るわけない。でも、じゃあなんだよ、その顔」 「どんな顔だよ」 「どんな顔って。……いや、もういいわ」  今日は職場に車を置いてきたから、帰りは電車しかない。車内なら帰り道も色々話せただろうけれど、人の多い電車で言い合いでもすれば目立ってしまう。  もどかしい気持ちを抱えながらも、翼から手を離さないでいた。

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