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アイツのアレが俺にも?-1
食事を終え、入浴も済ませたものの、翼がバイトでいないから特に何もすることがなく、ソファに座りながらスマホをいじっていると、急に着信画面に切り替わった。
「うわっ」
母さん、と表示されていて、まあそれを見なくても誰からか分かったけどね、と思いながらすぐに電話に出ると、陽気な声が聞こえてきた。
あははは! と楽しそうに笑っていて、俺が電話に出たことに気づいていなさそうだ。
かすかに父さんの声も聞こえていて、仲の良い夫婦だなと、少し微笑ましく思う。
「母さん、俺、電話に出てるんだけど。てか急に電話されるとびっくりするじゃん」
微笑ましいのは良いとして、いつまで経っても父さんと笑い合っている母さんに声をかけると、驚いたような反応があった。
母さんのほうからかけたし、俺はいつもわりと早めに電話に出ているよな?
「……あっ、航大だ、……サ、サプラ〜イズ!」
「……うん、ありがとうね」
急な電話がサプライズってことなのか?
父さんと楽しく晩酌でもしたのかと思うほどのテンションだ。
「それで、今日はどうしたの?」
「翼くんとは変わらず仲良くやってる?」
「……翼? うん、まあ、それなりに」
急に翼の話をされ、微妙に気まずくなる。先日一緒に帰省したときは、まだ翼にはっきりと気持ちを伝えられる前だったから、自然に「仲良くしているよ」と答えられたけれど、果たして今の状態はただの仲良くと言えるのだろうか。
母さんの想像する仲良くとはもう別物になってしまったかもしれない。
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