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アイツのアレが俺にも?-2
「それなら良かった! ところで、あんたもうすぐ誕生日でしょ? 荷物送るから! それだけよ、じゃあね!」
「えっ、あ、そっか、誕生日。ありが……って、ええー……」
ぼーっと話を聞いていたら、母さんに誕生日だと気付かされ、お礼を伝えようとした頃には電話が切られていた。
あまりの早さに少し混乱する。けれど、俺はまだ、翼と仲良くしているかと、そこへの引っかかりから抜け出せていない。
翼から好意があることを伝えられ、それが少なくとも華と別れる前からだとは分かった。
でも、冷静になって考えると、翼は随分昔から俺に懐いていたし、小春が話していた内容まで含めると、俺を好きになってくれたのは想像しているよりも、もっと前なのかもしれない。
それを受け入れる気がないのなら、いつまでも一緒に暮らさないほうが良いと自分でも分かっているけれど、俺のために色々頑張ってくれたり、あれだけ泣かれたあの日のことを思うと、出て行ってほしいとは言えないし、俺も別にそうしてほしいとは思えないし……。
そもそも俺は、どうして翼を追い出さないんだろう。
同情? 俺に懐いてくれることが案外心地良いから? 家族や美香さんへの説明が面倒だから?
……翼を傷つけたくないから?
というか、俺は翼から触れられたことで、傷ついてはいない、けど、どうしてだ?
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