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アイツのアレが俺にも?-3
「ただいま」
「……あ、おかえり」
考え事をしていたせいか、翼が帰宅したことに気づかず、いつの間にか目の前に翼の顔があった。
いつもならこういう状況で、「うわあ!」と叫ぶだろうに、そういう余裕もなく、まだどこかふわふわした気持ちで翼を見つめる。
「航大? ぼーっとしてどうしたの?」
どうもこうも、お前のことを考えていたら混乱しているんだが? と思いながらも、説明できることではないから無視していると、「眠いの?」と全く違うことを聞きながら、翼が顔をさらに近づけてきた。
唇に柔らかな感触がし、もはやこれにも慣れてきたと、特に反応せずにいたら、「眠いのに俺のこと待ってたんだ?」と勝手に嬉しそうに笑い、また俺にキスをする。
「翼、調子乗んなよ」
俺の気持ちも知らないで好き勝手しやがってと睨みつけたが、翼の口角は緩んでいて、今は何を言っても大して響かないと諦めた。
翼は気持ちを隠す必要がなくなってから、時々こうして軽めのキスをするようになった。
最初は怒っていたけれど、それでやめる感じもないから、最近はもうされるがままになってしまっている。
拒否しない俺の態度も良くないのだろうけれど、だとしたら何が正解なんだ?
「航大、怒んないで」
「別に怒ってないよ」
「え? 怒ってないんだ?」
「今ので怒った」
おそらく、キスしたのに怒らないんだ、嫌じゃないんだと、そういう意味で捉えて喜んだに違いない。
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