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アイツのアレが俺にも?-4

「ごめんてば、ね?」  謝りながらも懲りずに再度キスをする翼の頭を、わりと強めに叩くと、翼はぺろりと舌を出した。  可愛く誤魔化しているつもりなのか。 「謝りながらキスするバカがいるかよ」  翼に構うのをやめ、スマホへと戻ると、それが気に入らなかったようで翼は俺のスマホを奪うと、すぐに手の届かないテーブルの上に置いた。 「だって航大、本気で嫌がってないでしょ?」  「……はあ? 俺が何で嫌がってないって分かるんだよ」 「そんなの分かるよ。航大のことが大好きで、ずっと見てたから」  そのまま俺の隣に座ると、3人がけのサイズなのに、ぐっと詰めてくる。  さりげなく端にズレてみたものの、そんなことでは逃げられずさらに寄られた。  俺のことが好きで、俺のことをずっと見ていたら、俺の気持ちまで読めるようになるってこと? そんなわけないだろ。 「本気で嫌がってないって分かるとか言うわりに、ちょっと前はもう終わりだー、暮らせなくなっちゃうーって、号泣してたくせに?」 「あ、あれはさあ……!」  痛いところを突いたからか、翼は明らかに動揺した反応をする。  あの日は俺も余裕がなかったけれど、翼は泣きすぎて鼻水まで出ていたし、そういう部分を掘り返されたくはないのだろう。  

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