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アイツのアレが俺にも?-5
「ははっ、俺にも分かってない気持ちがお前に分かるわけないんだから、本当に調子乗んなよ」
「え? 航大でも自分の気持ちが分からないってどういうこと? それってさ……」
「……へ? あ、ああ、そういうことじゃあなくて……って、うお……!」
自分の発言の意図が翼にどう伝わったのかを理解したときにはもう遅く、翼に押し倒されていた。
ソファで自由がきかなくなると、翼が泣いたあの日の出来事を思い出してしまう。
「ちょっと落ち着けって……! 別に何かしていいぞって言ったわけじゃねえだろ!」
顔ごと逸らし、翼を見ないままでそう叫んだ。こんなんじゃ、何も納得してくれないだろうけど。
「でも、元々キスはしていいって言ってたじゃん」
ほうらね。また都合良く解釈する。
「それはお前が勝手にそう思ってるだけだろ」
「でも、今の発言だって、受け入れても良い選択肢があるみたいなことでしよ?」
「だから違うし、お前さっきから、でもでもってばかっかり、うるさい」
「うるさいのは航大じゃない?」
はあ!? とキレてやろうかと翼のほうに顔を向けたけれど、それが間違いだった。
俺が顔を向けた途端に、翼は待っていたかように唇を合わせてきた。
軽く触れた後ですんなり離れ、「お前なあ!」と叫んだタイミングで舌を入れられる。
「……ん!?」
あの日だって、ここまでのキスはしなかったのに。
「……つ、ば……さ、」
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