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アイツのアレが俺にも?-6
逃げれば逃げるほど奥へと押し込まれる翼の舌で、口の中がいっぱいになって息が苦しい。
背中を叩いてもやめてもらえず、呼吸も許してもらえないようだ。
ぼんやりとしてくる意識の中で、翼を見ていると、これだけ強引にしているくせに、顔を真っ赤にして必死感が伝わった。
何だよコイツ……!
唇を閉じたり、入ってきた舌を噛んだり、背中に回した指先に力を入れて爪で刺したり、いくらでも抵抗する術はあったのかもしれない。
それでも、どうしてかそれができない。俺はいつからこんなに翼に甘くなってしまったんだろう。
何か弱みを握られているわけでもないのに。
「……で? 嫌だった?」
どれだけの時間キスをされていたのか分からない。ようやく解放されたときには酸素が足りていないのか、ぼーっとして何も考えられなくなっていた。
「……嫌だった!」
何を尋ねられたのか理解し、時間差で答えたからか、翼は納得していない表情をしている。でもどこか、自信のなさもあるような、そんな雰囲気もあった。
「嘘だね。本気で怒ったり拒否するならこんな表情できないよ。……なあ航大、これが嫌じゃないなら、どうして嫌じゃないのか考えてよ」
翼は、最後に俺の頬や鼻に優しくキスを落とし、それからソファを降りると、「ちょっと頭を冷やしてくる」と外に出てしまった。
いまだに落ち着かない呼吸と、口の中に残る感触の中で、俺はどこを探しても見つからない嫌悪感に戸惑っていた。
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