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アイツのアレが俺にも?-8
「これって、航大の誕生日だから?」
引き出しに片付けながら、翼がぼそりと尋ねてきた。
翼が誕生日を覚えていたことに驚く。
「え? あ、うん。そうだよ」
「あーあ、先越されちゃった」
「越されたも何も、俺の誕生日は明日だし。何? 知ってたんだ」
「は? 当たり前じゃん」
誕生日当日でもなければ、母さんにおめでとうと言われたわけでもなく、誕生日を口実に生活に使えるものを送ってくれただけなのに、それだけでこんなに落ち込むか? と思うほどに、翼は肩を落としていた。
もしかして、受け取りに行ったのってケーキ?
先を越されたと落ち込むからには、越されるつもりがなかったということだ。それなら日付が変わった直後に何かするつもりだったのだろう。
「航大、今日は日付変わるまで起きてようよ。明日は日曜日で予定ないでしょ?」
たった今予想した通りの言葉を言われ、タイミングが良すぎると笑いが出る。いくら鈍い俺でも、これはあからさますぎてすぐに分かってしまった。
少し、意地悪してみようかな。
「あー、明日は朝から予定があるんだよね。同期と出かけるの。俺の誕生日を祝ってくれるらしい」
「……え?」
お菓子を棚に入れようとしていた翼が、ドサッと全てを床に落とした。
さっきから反応の全てが面白すぎる。正直たかが誕生日なのに、祝いたい気持ちが強すぎるだろ。
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