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アイツのアレが俺にも?-9
「ほら、この間居酒屋でお前とゴタゴタ言い合ったときに俺と一緒にいた人たちだよ」
「……ああ、そう、なんだ。じゃあさ、夜はいる? もしかして、夜も遅い?」
段々と元気がなくなっていく声に思わず顔を上げると、翼は眉を垂らし、唇を噛み締めていた。
「夜も遅いって言ったら? 何かあんの?」
「……あー、うん。何かしたかったけど、いいや。せめて今日、寝る前に少しだけ時間ちょうだい」
落ちたお菓子を拾い、再び棚へと手を伸ばす翼の背中が、何となく寂しそうに見えた。
けれど、いつもは強引なくせに、こんなにあっさりと引き下がるなら、もしかしてケーキじゃなかったのか?
一緒に過ごすつもりだったと騒いでもおかしくないだろうに、もしかしてそこまで俺の誕生日を祝うつもりがなかったのかな。
俺が勝手に先走っただけ? 恥ずかしいし馬鹿みたい。
今さら嘘だと言い訳もできそうにない雰囲気に、自分が招いたことなのに後悔しながら仕分けに戻ると、さっきまで棚の前にいた翼がいつの間にか俺の前に立っていた。
「航大……」
段ボールの中身を全て出し終え、種類ごとに並び替えている俺の横に座ると、俺の肩に頭を乗せてきた。
「ん?」
「やっぱり明日の予定、お昼からとかにできない? 俺、日付変わってから少しの時間じゃなくて、わりと長めに航大の時間がほしい。俺が1番に祝いたいんだけど」
俺に触れているくせに、視線は別のほうへ向けられていて、こうは言いながらも翼は自信がなさそうに見えた。
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