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アイツのアレが俺にも?-11
「時間、大丈夫だから……、翼と、過ごす、から……っ」
唇が触れていない時間も、翼の整った顔が至近距離にあるせいで、妙に落ち着かない。
またキスをされてしまうんじゃないか、今度はもっと激しくされたらどうしようとか、翼の目の下のほくろが気になるだとか、そもそも合わせられないくらいに俺に向けられる視線が強くて恥ずかしいとか、そういうことで頭がいっぱいになる。
「早く同僚に連絡して」
「……いや、あの、そもそも、予定とか、ないし」
ほんのちょっと揶揄うつもりが、まさかこんなことになるとは思っていなかったから、少し前の自分を呪いたくなる。
「俺に嘘ついたの?」
「ごめん……」
「それなら、こうして触れられても文句言えないね。俺、嘘つかれて悲しいんだけど」
「ごめって、ば……あっ!」
翼は俺の首筋に噛みつき、そのまま唇を這わせると、耳をかぷりと噛んだ。
身を捩ったところで逃げられるわけもなく、テーブルの脚と動かない段ボール、それから翼の手に挟まれてしまい、されるがままだ。
「キスは慣れたでしょ?」
いつもしてるもんね、と耳元で囁かれる。
翼が勝手にしているだけだろと言い返したかったけれど、そんな余裕はなく、何度も繰り返されるキスに身を委ねるしかなくなってしまう。
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