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アイツのアレが俺にも?-12
「航大はバカだね。何かあれば俺にこうやって触れられるかもしれないのに、それでも自分で新しい隙を作るんだから」
「別に、隙を作って……るわけじゃない、んだけど!」
「でも結果、意図せずとも隙ができてるじゃん。俺は悪い子だから、見逃してあげない」
下唇を軽く引っ張られ、歯列をなぞられる。思わず口を開くと、それを待っていたかのように舌をねじこまれた。
「んっ……! んんー!」
呼吸ができず、翼の背中を叩くことで苦しさをアピールしてみたけれど、一瞬離してくれただけで、息を吸い込んだと同時にまた塞がれる。
いつの間にか両手で頬を包まれていて、たたでさえ逃げられない状態なのに、さらに叶わなくなってしまった。
「航大って、キス下手くそじゃん」
「うる、さ……い」
「元カノとしてたんじゃないの?」
元カノと言われ、華のことがちらつく。こんなに強引なキスはしたこともなければされたこともない。
付き合っていたから軽いキスで止まるわけはないけれど、それでも、翼と今しているようなキスは一度もなかったと思う。
……じゃあ翼は? 誰として、こんなキスを覚えたの?
「翼、は、元カノ、とした、の、かよ……!」
流せば良いものを、そうはできずにどうにか伝えると、さっきまで絶対に離す気がなさそうだった翼の力が緩んだ。
どうしてが気に入らない。
翼に元カノがいた事実に驚いたのか、翼が俺にしているようなキスを、これまで他の女の子にしていたことを想像したからなのか。
理由はともかく、気に入らないという気持ちだけはっきりと自覚できた。
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