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アイツのアレが俺にも?-16
「飲んだら汚い!」
「え? 飲ませたことないの?」
「ない! そんな飲んでほしい願望とか別にないし」
「じゃあ俺が初めてってことになる?」
「そうだけど、その初めては別にいらないだろ!」
あれだけ出せなかった声もスムーズに出るようになり、翼に怒鳴りながら手を拭いた。翼は何も笑えないこの状況で、クククと笑っている。
「俺は別に、翼に性欲処理してほしいとかじゃないし」
手を洗いに行かせれば早かったのに、俺はそこまで頭が回らず、最後にウェットティッシュで拭いた。
この際、気持ち良かったかどうかは置いといて、処理をさせてしまったことは事実だから。
「性欲処理のつもりで触れてないんだけど」
笑っていた翼は真顔になり、声が低くなる。
翼にとったら間違ったことを言われて怒ったのかも。
「いやそうかもしれないけど。てかお前の、それ……はどうするの?」
手を拭きながら、視界にどうしても入ってくる翼の主張したそれを指さし尋ねると、「航大ってやっぱりバカだね」と眉を垂らした。
「……はあ?」
「こんなことされたのに、俺の心配? 俺はいいの、落ち着くまで待つから」
「いや、でもさ」
「でも、じゃなくて。俺は航大が好きで、こんなことまで強引にしたんだよ? それなのに今ここで処理するだけで終わると思う? だから俺はいいの」
その代わりと、翼は俺を優しく抱きしめた。
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