88 / 186

アイツのアレが俺にも?-16

「飲んだら汚い!」 「え? 飲ませたことないの?」 「ない! そんな飲んでほしい願望とか別にないし」 「じゃあ俺が初めてってことになる?」 「そうだけど、その初めては別にいらないだろ!」  あれだけ出せなかった声もスムーズに出るようになり、翼に怒鳴りながら手を拭いた。翼は何も笑えないこの状況で、クククと笑っている。 「俺は別に、翼に性欲処理してほしいとかじゃないし」  手を洗いに行かせれば早かったのに、俺はそこまで頭が回らず、最後にウェットティッシュで拭いた。  この際、気持ち良かったかどうかは置いといて、処理をさせてしまったことは事実だから。 「性欲処理のつもりで触れてないんだけど」  笑っていた翼は真顔になり、声が低くなる。  翼にとったら間違ったことを言われて怒ったのかも。 「いやそうかもしれないけど。てかお前の、それ……はどうするの?」  手を拭きながら、視界にどうしても入ってくる翼の主張したそれを指さし尋ねると、「航大ってやっぱりバカだね」と眉を垂らした。 「……はあ?」 「こんなことされたのに、俺の心配? 俺はいいの、落ち着くまで待つから」 「いや、でもさ」 「でも、じゃなくて。俺は航大が好きで、こんなことまで強引にしたんだよ? それなのに今ここで処理するだけで終わると思う? だから俺はいいの」  その代わりと、翼は俺を優しく抱きしめた。  

ともだちにシェアしよう!