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アイツのアレが俺にも?-24

 帰省を終えてからの1週間、バイトを詰め込んでいる翼とすれ違う生活が続き、ひとりの時間が多かったからか、何もない時間はずっと翼と自分の関係性について考えていた。  女性や男性に限らず、翼以外の人に同じように触れられたら、俺は絶対に力づくで拒否していると思う。  ごめんと呟きながら、同期のふたりで想像してみたけれど、どちらも本当に吐きそうなくらいにダメだった。  翼に対する嫌悪感がないのは、単純に幼なじみだからとか、一緒に生活しているからとか、そういうことだけではないのかもしれない。  小春の言うように、受け入れる努力をしてみても良いのか。 「航大!」 「うわあっ!」  考えごとをしていたせいで、翼が帰宅していることに気づかなかった。  いつの間にかリビングに入ってきた翼が、後ろから俺に抱きつき、心臓が飛び出てしまうのでは? というくらいに騒がしくなる。 「やめろよ、今ので絶対に寿命が縮んだわ」  胸をさすりながら振り向くと、「じゃあこれで延命」と、翼がさらりと俺にキスをした。  翼が驚かせてきたときはちっとも嬉しくなかったし、何なら若干イラついたくらいなのに、こうしてキスをされることに対しては、やっぱり何も思わない。  すぐに離れた翼の唇をじっと見ていると、「もう一回?」と笑った翼が、また俺の口を塞いだ。

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