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アイツのアレが俺にも?-26

 それはそれでショックだと自覚したところで、何かが変わるわけではないと思ったのは間違いだったと気づいた。  たぶん俺は、理由を聞いて安心したかったのかもしれない。翼がどれだけ俺を思ってくれているか、改めて言葉で聞きたかったのかも。 「ただ、ひとつ言えるのは、航大といると些細なことが嬉しく思えたし、幸せに感じてた。キラキラする。それがずっと変わらなくて、俺の中で溜まっていくんだよね。手放したくないって思う」 「え……?」  翼の俺に対する想いは、俺がずっと大切にしていきたいものと重なっているように思えた。  些細なことで幸せを感じて、その穏やかな日々を大切にしたい。そしてそう思わせてくれる相手と、歳を重ねていきたいと。  それをまさか、このタイミングで翼に言われるとは思っていなかった。  だから自分で聞いたくせに、構えていなかった分の動揺が大きい。もちろん、嬉しさも。  華との生活で否定された自分が、翼に肯定してもらえたような気持ちになった。俺は俺のままで良いよと、そう言ってもらえたみたいだ。  急に報われたような感覚でぐちゃぐちゃになり、自分でも驚くほどに涙が止まらなくなった。  拭っても拭っても流れ落ちる涙に、翼がおろおろしているのが分かる。 「航大……? 俺、変なこと言った……?」 「うるさい、バカ。黙って抱きしめろよ」 「ええ?」  

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