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アイツのアレが俺にも?-27
思わず翼に擦り寄ると、戸惑いながらも大きな手で抱きしめられ、翼の腕の中にすっぽりおさまったような居心地の良さを感じた。
翼は俺が落ち着けるように、何度も優しく背中を撫でてくれる。
でもその手が震えているのも伝わって、翼がそれほど俺のことを大切に思ってくれているのだと分かった。
「心臓の音、うるさすぎ」
「だって航大が、こんな、急にさ、」
相変わらず混乱したままの翼に、俺は自らキスをした。
予想外の出来事に姿勢を崩した翼がソファに倒れ込み、俺はそのまま翼に跨った。
「航大……、ちょっとこの姿勢は色々とやばい」
「なんで?」
「何でって……俺、航大のこと好きなんだよ?」
「知ってる」
俺は翼の手を掴むと、自分の胸へと押しつけた。
「……航大? 何でこんなにドキドキしてんの?」
「……知らない。翼のが移ったかも」
「ねえ、本気で言ってる? 煽んないでよ」
片手は俺の胸に押しつけたままで、俺はもう片方の手で翼の襟元を掴み、ぶつかるように唇を押しつけた。
「分かんないけど、なんか、いっぱいいっぱいで、」
「……うん」
「翼に触れられるの、どうして嫌じゃないのか考えてみたら」
「……うん」
「翼のが移ったのかもって」
今はこれだけしかうまく言えないけれど、俺の下で俺を見つめている翼が、あまりにも優しい表情をしているから、自分の情けなさを感じ、それにもまた、涙が滲む。
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