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男前な彼-4

 テーブルにふたつコップを置いたタイミングで、翼と小春が戻ってきた。  何の話をしたのかと視線を向けると、それに気づいた小春が、にいっと口角を上げる。 「航兄、嫉妬したの?」 「は? するかよ」  薄目で小春を睨むと、それから用意していたコップを翼に渡した。 「俺の? ありがとう」  さりげなく俺の横に座った翼は、椅子を動かし距離を縮めた。  肩がぶつかるくらいに近づいた距離に動揺し、「ふざけんなよ」と耳元で囁くと、「ふざけてないよ」と真顔で返される。  家じゃあるまいし、とそう思いながらも、当たり前に隣に座ってこうして近くにいたいと思ってもらえることは地味に嬉しい。  でも俺たちを見ても、母さんも美香さんも、お似合いだねとは言わないんだろうな。  自分でも驚くほどに感情の起伏が大きくなり、落ち着かせるためにお茶を一気に流し込んだ。 「今日は何食べる? 食べに行ってもいいし、お寿司持ち帰りとかでもいいし」  小春と俺、それから翼の顔を順に見た母さんが、あんたたちが決めな、とでも言うように頷く。 「翼、何食べたい?」  隣の翼に尋ねると、その後ろから小春が顔を出した。 「うわーん、航兄ってば、私じゃなくて翼に真っ先に聞くんだ?」  翼の気持ちも知っているし、もしかしたら俺との関係が進んだこともさっき聞いたのかもしれない。  だからなのか、俺が翼を優先するような場面でいちいち突っかかってくる。 「……さすがにいい加減にしろよ」 「やーん、航兄こわーい! 翼、お寿司って答えて」

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