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男前な彼-5

 後ろの小春に言われるがままに翼が「寿司で」と答えると、母さんがすぐに予約の電話を始めた。 「本当に寿司で良かったのか?」  ふざけた顔で俺を見ている小春を、睨むようにして見ると、小春は「翼ー、助けてー」と言って、翼の首に巻きつく。  後ろから抱きついているように見える体勢に、少しだけイラッとした俺は思わず立ち上がると、翼から小春を引き剥がした。 「え?」  衝動的に動いたせいで、引き剥がした後に自分の行動を振り返り、さっき小春に指摘されて否定したばかりの嫉妬丸出しな自分に焦る。 「あれ? あれれ?」  いつもは俺のことが好きで、俺のことを気遣ってくれる小春が、今日はすごく意地悪だ。  俺の反応を楽しむためか、再度翼に抱きついた。  それから翼の耳元でこそこそと話し、話し終えると、翼は俺のほうを向いたままで頭上に手を伸ばし、後ろの小春の頭を撫でた。    絶対に小春の指示だと分かるのに、それに素直に応じている翼にも腹が立つ。  ふざけるなよと睨みつければ、小春がますます楽しそうに笑う。 「どうして怒ってるのかなー? あれれー?」  何としてでも嫉妬と言わせたい小春と、絶対に認めない俺の闘いが始まり、挟まれた翼は少し気まずそうにしつつも、小春が勝つほうが嬉しいからか、助けずに眺めている。  そうこうしているうちに、「何してるの?」と母さんがやって来て、俺の頭を思い切り叩いた。 「喧嘩しないの。お寿司取りに行ってきて」

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