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男前な彼-7

 寿司を受け取り、帰宅するまでの時間も、翼とはあまり上手に話を続けられずに、後半は黙って歩いていた。  いつものように話せばそれで良いのに、やっぱり俺がさっきのことを気にしてしまって、それで変な距離があいたのかもしれない。  ひとり分あけた距離は、玄関に着くまで縮まることはなかった。 「これ、食べ切れるかな」  受け取るときから既におかしいとは思っていたけれど、テーブルに並べた寿司は、想像よりも多く、いくら大人が5人とはいえ、なかなかに厳しい量に思えた。  洗い物が多くなるから取り皿は紙にしてしまえと、紙の皿と割り箸をみんなに配り、それぞれ席につく。  自分から翼の横に座るのはどこか気まずさがあったから、真っ先に席につき、翼の判断に任せることにした。  俺の隣に座ってくれるだろうかと、そんなことでひとり緊張していて、自分の情けなさに笑いが出てくる。 「航大、飲み物ある?」 「……あ、うん。ある。ありがとう」  俺の心配をよそに、翼はすぐに俺の隣に座った。けれど、来たばかりのときは肩が触れるくらいに近かったのに、今は買い物のときと同様で、ひとり分の距離があいていた。  何でそんなことすんの。俺が距離を縮めた翼に、ふざけんなよって言ったから?  いつもはそんなことでやめないのに?

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